接客業に従事する皆さんにとって、理不尽なクレーム対応は避けがたい悩みのひとつです。
サービスの質を向上させようと努力する一方で、どうしても一部のクレーマーの心理や行動に苦しんだ経験があるのではないでしょうか?
その行動が理不尽であればあるほど、
と疑問に感じることもあると思います。
そこで今回は、様々な接客業種を経験し、さらに店長としてクレーム対応に長年携わってきた経験から、クレーマーの心理や対処法を解説していきます。
多岐にわたって対応してきた経験からお話しするので、ぜひ参考にしてください!
クレーマーはどんな人物に多い?

クレーマーの行動には個人の性格や心理が大きく影響しています。
この章では、どのような人物がクレーマーになりやすいのか、その特徴について解説します!
完璧主義で小さなミスを許せない人
クレーマーの中には、非常に完璧主義な人が多くいます。
こうした人はサービスの小さな欠点を見逃すことができず、それをクレームの対象とします。
特に、
と考える傾向があり、自分が受けたサービスや商品に対して理想が高い分、不満も抱きやすくなります。
自己中心的で他人に厳しい人
自己中心的で、他人に厳しい人もクレーマーになる可能性が高いです。
このタイプの人は、自分の要求や考え方を最優先し、他人の立場や気持ちを考えることが苦手です。
自分が満足できなかった場合や期待を裏切られたと感じた際には、相手がどう感じるかを考えずにクレームをつけることが多く見られます。
自己承認欲求が強い人
自己承認欲求が強い人もクレーマーに多い特徴の一つです。
このタイプの人は、自分の意見や存在を他者に認めてほしいという欲求があり、サービス提供者にクレームをつけることで「自分が特別な存在」だと感じたがる傾向があります。
店員やスタッフが自分に対して特別な対応をすることで満足感を得ようとするため、些細な問題でもクレームに繋がりやすくなります。
自分を賢いと思い込んでいる人
クレーマーの中には、
という意識が強い人が多くいます。
このようなタイプの人は、自分の考えや意見に絶対的な自信を持ち、自分が間違っている可能性をほとんど考えません。
そのため、サービスや商品の提供方法について少しでも納得がいかないと、
- 自分が正しい
- 自分は他の客とは違う
といった考えから、サービス提供者に対して強気で批判的な態度を取る傾向があります。
ストレスや不安が溜まっている人
日常的にストレスや不安を抱えている人も、クレーマーになりやすいと言われています。
仕事や家庭でストレスが溜まっていると、その不満が接客業のスタッフやサービス業者に向けられやすくなります。
理不尽なクレームを通じて、溜まった感情を解消しようとする心理が働くため、特にストレスが高いときにクレームが頻発する傾向があります。
精神的な問題がある人
クレーマーの中には、
- 統合失調症
- 不安障害
- 双極性障害
- パーソナリティ障害
などの精神的な病気を抱えているために、通常とは異なる反応を示しやすい人もいます。
特に統合失調症などの場合、現実と異なることを信じ込んだり、他者から攻撃されていると感じる被害妄想があることもあり、些細な接客上の出来事に対しても、過剰な不安や怒りを表すことが少なくありません。
精神的な病気を抱えている場合、理性的な説明や通常の対応が伝わりにくく、感情が揺れ動きやすいために、クレームがエスカレートしやすいのが特徴です。
一度解決した問題でも、再び不安や疑念が生じ、クレームが繰り返されることがあります。
認知機能が低下している人
クレーマーの中には、高齢で判断力や記憶力が低下している「ボケてしまっている人」もいます。
このような人たちは、無意識のうちに自分の要求や状況を誤解していることが多いです。
その結果、スタッフの説明に納得せず、
- 以前はこうだった
- 自分の言ったことが正しい
と強く主張するケースも少なくありません。
このタイプのクレーマーは、悪意や意図的なクレームではなく、認知機能の低下や混乱が原因でクレームを起こしているため、対応には特別な配慮が必要です。
クレーマーの心理とは?

クレーマーの行動には、様々な心理的要因が絡んでいます。
単に「頭がおかしい」と片付けてしまうのではなく、その背景にある理由や動機を理解することで、冷静に対処する手がかりが見えてくるはずです。
不安やストレスが行動に表れる場合
多くのクレーマーは、日常生活での不安やストレスを抱えています。
このストレスが日常で発散できないと、最も手近な対象である接客スタッフに対して、その感情が爆発することが少なくありません。
たとえば、家庭や職場での不満が溜まっていると、それを他人に転嫁するような形で、理不尽なクレームを起こす場合もあります。
クレーマー気質な人は、どこに行っても些細なことでイラついてしまうので、ストレスが溜まりやすいのでしょう…
自己承認欲求と優越感を求める心理
クレーマーの中には、他者からの認知や自尊心の強化を求める「自己承認欲求」が高い人が多くいます。
この欲求が満たされていないと、
という傾向が出てくるのです。
接客スタッフに無理な要求を突き付けたり、理不尽なクレームを繰り返したりすることで、
- 自分が上に立っている
- 自分は特別だ
と感じたい、そんな心の動きが背景にあります。
過去の成功体験が影響するケース
一部のクレーマーは、過去にクレームをつけたことで何かしらの得をした成功体験があり、それを繰り返そうとするケースも少なくありません。
たとえば、
- クレームをつけたらサービスが良くなった
- 要求を通したら特典がもらえた
という経験があると、再びその行動を取る傾向が強くなります。
こうした成功体験によって、クレーマーとしての行動が「有効な手段」として定着してしまうことがあります。

クレーマーの行動がエスカレートする要因とは?

要求が満たされなかった場合の反応
クレーマーは、
- 最初のクレームが満たされなかった
- 期待通りの対応がされなかった
と感じると、行動が過激化することがあります。
例えば、「この店は自分を無視している」「まともに対応してくれない」という感情が膨らむと、それが不満の増大につながり、要求がどんどんエスカレートするのです。
このような場合には、適切な対応を行うことで、早めに鎮静化させることが大切です。
周囲の視線を意識して過剰な行動に出る心理
クレーマーは、自分の行動が周囲の人々からどのように見られるかを意識することが多く、周囲の注目を集めようと過剰な行動に出ることがあります。
たとえば、他の顧客がいる前で
- 大きな声で怒鳴りつける
- 店員を威圧する
などの行動を取るのは、周囲の視線を利用して自分の要求を通そうとする心理が働いているためです。
最近だと「大声を出す」以外にも「動画を撮る」という人も増えてきていますよね…
過剰な期待と現実のギャップによる不満
現代では、インターネットやSNSなどを通じて「完璧なサービス」が当たり前のように情報発信されています。
そのため、クレーマーは過剰な期待を抱くことが多く、現実のサービスに対して不満を抱く原因になります。
「もっと対応が良くあるべきだ」「自分は特別な客だ」という意識が強くなると、理不尽な要求がエスカレートしやすくなるのです。

頭のおかしいクレーマーの対応方法

クレーマーの行動が頭を悩ませるものだとしても、適切な対応策を理解することで冷静に対処することが可能です。
ここでは、理不尽なクレーマーへの具体的な対応方法についてご紹介します!
感情に左右されない冷静な対応の重要性
まず、クレーマーへの対応で最も大切なのは「冷静さ」を保つことです。
理不尽なクレームをつけられると、つい感情的になりがちですが、こちらが冷静さを欠くと事態が悪化する恐れがあります。
どれだけ相手が理不尽であっても、感情的にならず淡々と対応することがポイントです。
最近は隠して録音してい人もいるので、言葉選びは特に慎重になりましょう!

適度な距離感を保ち、巻き込まれない姿勢
クレーマーに過度に同調したり、相手の感情に巻き込まれないように注意しましょう。
共感は大事ですが、相手の理不尽な要求に対して無条件に応じるのはNGです。
「お客様の気持ちは理解しましたが、当店ではこのように対応いたします」といった形で、適切な距離感を保ちながら対処することが重要です。
何か言われても「お店のルールなので」と貫き通しましょう!ただし、自分で把握できてないことであれば、必ず責任者へ確認してください。
店舗や上司の指示に基づいた一貫性ある対応
最後に、クレーマー対応では、
が求められます。
クレーマーに対して対応が異なると、「他のスタッフはこうしてくれたのに」といった不満を引き出す原因になりがちです。
したがって、対応の方針があらかじめ店舗全体で統一されている場合、それを遵守することがトラブルを最小限に抑えるための鍵となります。
無理して特別な対応をする必要はありません!ただし、自分に非があるときにはしっかりと謝罪を忘れずに。
クレーマーに振り回されないための予防策

この章では、クレーマーに振り回されずに済むように、事前にできる予防策について解説します。
未然にクレーマー対応を防ぐための工夫を行い、トラブルの発生率を低く保つことを意識していきましょう!
サービスや製品の説明を徹底する
クレーマーが理不尽な要求をするのは、サービスや製品の内容に誤解がある場合が多いです。
特に、サービスの詳細や注意点を十分に理解していないことで、不満が生まれることが多いため、事前にしっかりと説明を行いましょう。
明確な説明を心がけることで、誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
説明しても「聞いてない!」と言ってくる人もいるので、規約などは紙やメールで送って証拠を残すことで、こちらも強く否定することができます!
クレーム対応マニュアルを準備しておく
クレーム対応の際に、
を取ることができるように、マニュアルを整備しておくと効果的です。
例えば、
- よくあるクレームの対応手順
- 具体的なセリフ例
などをマニュアルにまとめておくと、スタッフ全員が自信を持って対応できるようになるでしょう。
また、新人スタッフでも安心してクレーマーに対処できるようになるため、店舗全体のクレーム対応力が向上します。
感謝の気持ちを示す接客でクレームを予防する
最後に、普段の接客態度として、感謝の気持ちを示すことを意識するのも大切です。
「お客様のおかげでこの店が成り立っている」という気持ちを込めた接客をすることで、お客様の心が柔らかくなりクレームが起こりにくくなります。
感謝の態度で接することで、クレーマーにも冷静に対応でき、トラブルを未然に防ぐ効果が期待できるでしょう。

おまけ:実際にあったクレーマーの対応例とポイント

この章では、実際に私が出会ったクレーマーとその対応を紹介します。
一緒にクレーム対応のポイントを見ていきましょう!
実際にあったクレーマーエピソード
月々会費を支払う必要のある会員制クラブで、お客様が「知らない」「聞いてない」と繰り返し、散々サービスを利用したのに何度も電話で支払いを拒否してきたことがありました。
そのクレーマーは若めの男性で、私の不在時にアルバイトに「ふざけるな!俺は払わない!」と何度も威圧的にクレームを入れてくるのです。
利用記録も契約書もそろっているので、アルバイトが丁寧に「お支払いをお願いします」と案内しましたが、まったく納得する気配はなかったそうです…アルバイトから報告を受けた私は、支払いが必要な旨を丁寧に説明し直しましたが、自分の主張しかしないクレーマー。あまりにも聞く耳を持たないので、店長権限で「グループ全店舗への出禁」を宣告しました。
言葉がわからないのか?と疑ってしまうほど、こちらの話を理解してくれない方でした…
「出禁にする」というあっけない終わり方ではありますが、本気で自分の主張を絶対だと信じ切っているヤバい客だったため、これ以外の終着点はなかったと思っています。
数千円のために裁判を起こすのも時間と労力の無駄ですしね…
早急な責任者への報告が大切
前述したように、アルバイトスタッフだけではどうこうできないようなイカれたクレームも実際に起こり得ます。
そんなときは、勝手な判断をせず、必ず責任者に対応を仰ぎましょう。
アルバイトが正しい対応がわからないのに、クレーマーの勢いに押されて変に柔軟な対応をしてしまうと余計ややこしいことになりかねません。
例えば、アルバイトがその場で勝手に「支払わなくていい」と言ってしまうなどですね!
冷静にルール(規約)を一貫した内容を貫く
今回のケースでは、アルバイトスタッフも店長の私も、規約に基づいて「支払いをしてください」という案内を徹底しました。
そして、最終的には規約に基づき”出禁”という決断を下しています。
ご案内時も、相手は怒り狂っていましたが、こちらは冷静さを保ち、喧嘩腰にはならずに淡々と対応を心がけたことで、相手をそれ以上ヒートアップさせませんでした。
このように、
- 理不尽な要求にも引かない
- 冷静な対応
- 責任者にパスする
というポイントを意識して対応できれば、クレームにも適切に対処できるはずです。
相手が100%悪い場合は、下手に出ず、毅然と冷静に対応を心がけましょう!
まとめ

接客業でのクレーマー対応は、理不尽な要求に悩まされることが多く、精神的な負担が大きいものです。
しかし、クレーマーの心理を理解し、冷静かつ適切な対応を心がけることで、少しでもストレスを軽減することができます。
本記事でご紹介したクレーマーの心理や具体的な対応策を実践することで、少しでも仕事の負担が減り、より前向きに接客業務に取り組めるようになっていただければ幸いです!


